相続における預貯金の名義変更と注意点
1 相続時に預貯金の名義変更をする際の注意点
預貯金の相続手続き(被相続人から相続人へ名義変更をする手続き)をするためには多くのことを行わなければならず、予想以上に手間と時間がかかることがあります。
相続税の納付などで現金が必要な場合には、できるだけ早く手続きを開始する必要があります。
具体的には、遺言がない場合には、戸籍謄本類の収集と遺産分割協議書の作成(相続人が複数人いる場合のみ)をする必要があり、遺言があっても法務局による保管制度を利用していない自筆証書遺言である場合には家庭裁判所で検認手続きをしなければなりません。
そのうえで、銀行等で相続手続きを行うことになります。
また、手続き後、被相続人の預貯金が相続人に送金されるまでにもある程度時間がかかります。
以下、預貯金の名義変更の流れについて説明します。
2 預貯金の名義変更の流れ
⑴ 遺言がない場合
まず、多くの相続手続きに共通したことではありますが、相続人を確定させるために被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本を取得する必要があります。
続いて、相続人が複数人いる場合には、どの相続人が預貯金を取得するかを決めるために遺産分割協議を行い、協議の結果を記した遺産分割協議書を作成します。
なお、相続人が一人だけの場合には、その相続人がすべての相続財産を取得することが明らかですので、遺産分割協議書は作成する必要はありません。
ここまで準備ができたら、金融機関の窓口や相続専用部門などに連絡をとり、相続手続きを行います。
金融機関での相続手続きは、通常は金融機関所定の書類に必要事項を記載し、戸籍謄本類(法定相続情報一覧図でも可能)と遺産分割協議書の原本を提出します。
戸籍謄本類と遺産分割協議書は、通常は写しを取った後で返還されます。
その後、金融機関にもよりますが、2週間~1か月程度で被相続人の預貯金が相続人の口座に移されます。
⑵ 遺言がある場合
遺言にはいくつかの種類がありますが、自筆証書遺言でかつ法務局による保管制度を利用していない場合には、まず家庭裁判所で検認という手続きをする必要があります。
検認の申立てをする場合にも、戸籍謄本類を収集する必要があります。
申立後、家庭裁判所から検認の期日が通知されますので、当日家庭裁判所へ行き検認手続きを行います。
検認が終了した後、家庭裁判所から検認証明書を取得します。
参考リンク:裁判所・遺言書の検認
公正証書遺言または法務局で保管している自筆証書遺言の場合には、原本を持って、金融機関の窓口や相続専用部門などに連絡をとり、相続手続きを行います。
検認済みの自筆証書遺言の場合、検認証明書も必要となります。
その後の手続きは、基本的には遺言がない場合と同様になります。
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